社長・経営者・自営業の離婚

社長・経営者・自営業の離婚の特徴・留意点

会社(事業)経営者が(または会社(事業)経営者と)離婚する場合に注意しなければいけない点について説明します。

 

財産分与において2分の1ルールが該当しない場合がある

一般的な夫婦の離婚の場合、財産分与の割合は2分の1ずつが原則です。もっとも、夫婦の一方が会社経営者(事業経営者)で、財産の形成が会社経営者(事業経営者)の個人的な能力・力量によるといえる場合、財産分与が2分の1ずつとはならない場合があります。

例えば、夫が会社経営者で妻が専業主婦であり、夫の経営手腕により会社を拡大し、多くの財産を築いたというような事情がある場合、夫に妻より多くの財産分与割合が認められる余地があり、実際に妻の寄与度が半分以下しか認められなかった裁判例もあります。
もっとも、一般的には、妻が専業主婦であったか否かを問わず財産分与割合は原則として平等とする扱いが近時の実務の大勢ですので、2分の1ルールが妥当しないことを主張する経営者の側としては、個人的な手腕や力量で資産を形成した部分が大きいことをいかに説得的に主張するかがポイントとなります。

法人財産は財産分与の対象とならない

夫婦の一方が法人として会社経営を行っている場合、法人が有している財産自体は財産分与の対象とはなりません。法的には法人と経営者個人とは別個だからです。
もっとも、会社が個人経営の実態を有する場合の会社財産を分与の対象とした裁判例も存在します(大阪地判昭和48年1月30日判時722号84頁)。また、経営者個人が金銭を法人に貸し付けていたり、法人の株式・出資持分を有している場合、貸付金、株式・出資持分は経営者個人の財産となりますので、財産分与の対象になる余地があります。

 

事業経営者にも退職金がないとは限らない

会社経営者(事業経営者)の場合、一般的に退職金はありません。
もっとも、長期平準定期保険と呼ばれる法人向けの長期定期保険(長期間の死亡保障、貯蓄性が高いこと、節税効果があることなどが特徴です)が退職金として掛けられていることがあります。また、個人事業主や中小企業の場合、小規模企業共済が利用されている場合もあります。
これらも財産分与の対象となる可能性があります。

 

事業経営者の収入額の捕捉が難しい

事業経営者の場合、会社員などとは異なり、決まった給与がなかったり、役員報酬などを自由に決められる場合もあります。この場合、婚姻費用や養育費を算定する基準となる年収は、確定申告書等をもとに判断するほかありません。しかし、確定申告書は、経費を多めに申告するなど、何らかの操作が加えられている可能性があり、必ずしもその人の現実の収入額を反映しているとは限らない場合があります。限界はありますが、実際の収入や経費がいくらなのかは、預金通帳や領収書類等から明らかにしていく必要があります。事業経営者に対して婚姻費用や養育費を求める場合、これらの資料から実際の収入がいくらなのかをいかに主張していけるかがポイントとなります。

 

財産の見落としに注意

会社経営者(事業経営者)は一般的に高収入ですので、一般的には問題とならないものも、財産分与の対象となる場合がありますので、注意する必要があります。例えば、動産類(貴金属、高級腕時計、美術品)、ゴルフ会員権、株式などの有価証券、外車などの高級車などについても、財産分与の対象となる可能性があります。

 

役員や従業員の退任・退職の問題

会社経営者(事業経営者)には、配偶者を取締役や監査役にしている場合があります。
この場合、離婚したという理由だけでは退任させることはできませんので、株主総会決議を適切に開くなどの措置が必要です。配偶者の側から見ても、離婚後も取締役や監査役のままでいると、会社に何か問題が起こった場合に会社法上の損害賠償責任を負わされてしまう危険があります。このため、離婚協議の際に、配偶者から退任届の提出・退任登記手続についても併せて行っておくことをお勧めします。
また、配偶者を従業員として雇用している場合も同様であり、退職届の提出を併せて行っておくことをお勧めします。  

以上のように、夫婦の一方が会社経営者(事業経営者)の場合、離婚にあたり特に注意しなければいけない特有の問題があり、法的に複雑な問題をはらみます。離婚問題を得意とする弁護士に早めにご相談されることをおすすめします。

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