熟年離婚と慰謝料
「長年連れ添ったからこそ、正当な慰謝料を受け取りたい」
近年、長年連れ添ったご夫婦がさまざまな理由から離婚に至る「熟年離婚」が増加傾向にあります。
離婚を検討されても、離婚後の生活における経済的・社会的な不安を抱える方が少なくありません。
そのため、離婚時にどの程度の財産分与や慰謝料が見込めるのか、住まいをどう確保するか など、離婚後の人生設計を事前にしっかりと考え、準備をしておくことが非常に重要です。
本記事では、 「熟年離婚に伴う慰謝料」 に焦点を当てて、わかりやすく解説していきます。
財産分与については、以下の記事に詳しく記載していますので、そちらもあわせてご確認ください。
熟年離婚をご検討中の方や、将来的に不安を感じている方にとって、少しでもお役に立てれ ば幸いです。
慰謝料とは?
離婚における慰謝料とは、婚姻関係が破綻したことにより被る精神的苦痛を補償するためのものです。
離婚をすれば必ず支払われるものではありません。
請求できるかどうかは、離婚の原因(婚姻関係が破綻した理由)によって決まり、不倫・浮 気や DV、モラハラなど相手に落ち度がある場合に限られます。
離婚慰謝料請求が認められやすいケースは主には以下の3つです。
- ①不貞(浮気・不倫)
- ②DV、モラハラ
- ③悪意の遺棄
慰謝料請求が認められる主なケース
不貞
「不貞」とは、配偶者以外の人と自由な意思に基づいて性的関係を持つことを指すと考えら れています。
性的関係を持ったかどうかは、「性交」または「性交類似行為」という肉体関係がある場合 を指します。
肉体関係を伴わない交際は、不貞行為には当たらないとされていますが、交際態様によって は、慰謝料請求が認められるケースもあります。
慰謝料の金額を決めるにあたっては、以下のような事情が考慮されます。
- 不貞期間の長さ
- 不貞回数の頻度
- 交際態様
- 婚姻期間の長さ など
慰謝料の相場は50万円~300万円とされています。
上記考慮事情によって、金額が変動します。
具体的金額は、弁護士へご相談ください。
DV、モラハラ
身体的暴力(DV)や精神的暴力(モラルハラスメント)も、婚姻関係を破綻させる一つの 事情となり、慰謝料請求の理由となります。
慰謝料の相場は数十万円~300万円とされています。
暴行態様や暴行頻度、けがの程度、嫌がらせの程度によって金額が変動します。
悪意の遺棄
「悪意の遺棄」とは、正当な理由なく、夫婦としての同居や協力義務に違反することを言います。
例えば、以下のようなものが悪意の遺棄に該当します。
- 理由なく、家事や育児を放棄して一方的に出ていく
- 理由なく、配偶者を自宅から追い出そうとする
- 収入があるにもかかわらず、生活費を一切支払わない
DV やモラハラから逃れるために家を出た場合には、「正当な理由がある」とみなされ、遺 棄にはあたりません。
慰謝料の相場は数十万円~300万円とされています。
悪意の程度や、遺棄の態様等によって金額が変動します。
慰謝料請求を成功させるために重要な準備
証拠を集める
慰謝料を裏付けるためには、客観的な証拠が不可欠です。
不貞の場合
- メール・LINE のやりとり
- ホテルへの出入り写真や領収書
- 録音・録画
DV、モラハラの場合
- 医師の診断書、暴力の痕跡写真、目撃者の証言
- 警察署への相談実
- 録音・録画
悪意の遺棄の場合
- 家計が困窮しているとわかるもの
- 別居すべき理由がないにもかかわらず、合意なく別居が始まったことがわかるもの
様々な証拠を挙げてきましたが、証拠1つのみで、婚姻関係破綻の原因が判断されるケース は多くありません。
また、複数の証拠を組み合わせることで、慰謝料が高額となるケースもあります。
パターン1【相手から暴力を振るわれたケース】
相手から殴られて怪我を負ったとしても、その怪我が相手の暴力によるものであることを 証明する必要があります。
- 怪我の程度:医師の診断書や暴力の痕跡写真から証明
- 相手が暴力を振るったこと:録音・録画から証明
これらの証拠を組み合わせることで、相手から暴力を受けたこと、怪我の程度を証明することができます。
パターン2【相手が不貞をしていたケース】
不貞回数が1回の場合よりも、複数回の方が慰謝料は高額となる傾向にあります。
それでも、証拠として集められるものには限度があると思います。
例えば、ホテルへの出入り自体は1回しか写真に収められていないという場合が考えられます。
このような場合でも、メール・LINE のやりとり等を組み合わせることで、複数回不貞行為 をしていたことを証明できるケースもあります。
どのような証拠が必要なの?
今ある証拠で足りるの?
今後どのような証拠を集めていけばいいの?
そんなご不安をお持ちの方は、一度弁護士へ相談するのが良いでしょう。
時効・注意点
慰謝料請求権の時効は、原則、離婚後3年とされています。
離婚をする際に取り決めをした場合には、問題ありませんが、 既に離婚をしている方の場合には、注意が必要です。
また、有責行為が認められない事情(性格の不一致など)では慰謝料が認められないケース もあります。
慰謝料以外に請求できるもの
熟年離婚に不安を感じていませんか?
長年連れ添った夫婦関係を終わらせる決断は、誰にとっても簡単ではありません。
特に熟年離婚の場合、「ひとりで生活できるだろうか」「経済的にやっていけるのか」といっ た不安から、なかなか離婚を切り出せない方も多くいらっしゃいます。
しかし、熟年離婚だからこそ、これまで築いてきた財産をしっかりと分け合う「財産分与」 や「年金分割」が受けられるケースもあります。
また、精神的・身体的な暴力など、我慢してはいけない状況であれば、離婚は新たな一歩となるでしょう。
弁護士に相談することで見えてくる道があります
離婚後の生活に対する不安は、法律の専門家に相談することで大きく軽減されることがあります。
たとえば
- 財産分与の適正な計算・交渉
- 慰謝料請求が可能かどうかの判断
- 年金分割の手続きや条件の確認
- 将来の生活設計へのアドバイス など
ご自身だけで悩まず、まずは弁護士にご相談ください。
将来への不安を取り除き、前向きな 一歩を踏み出すためのサポートをいたします。







































