熟年離婚
熟年離婚の特徴・留意点
熟年離婚の場合には、婚姻期間が長期に及んでいることから、特に財産分与と年金分割に若年層とは異なる特徴があります。
財産分与
熟年離婚の場合、財産分与の対象となる財産が多いことが考えられます。
財産分与は、婚姻期間中に夫婦の当事者双方がその協力によって得た財産が対象となるため、婚姻期間が長ければ、必然的にその協力によって得た財産は多くなります。
また、形成した財産の種類も預貯金だけではなく、不動産、保険、有価証券等多岐にわたっており、法的な観点から整理する必要があります。
特に不動産については、住宅ローンが完済又は大部分の支払いを終えているケースが多く、大きな財産価値を持つ場合があります(住宅ローンの残額が不動産の時価より大きい場合には原則として財産分与の対象とならない)。
さらに、熟年離婚の場合、退職金についても検討が必要です。一般的に、退職金は賃金の後払い的性質を有すると言われています。
それを前提にすると、退職金は、配偶者からの種々の協力(「協力」には家事労働党も含みます)を得て定年まで勤務を継続できたからこそ獲得できたものと評価することができますので、離婚時にその協力によって形成された相応分を分与すべきものとなります。
もっとも、将来支払われる退職金については、将来確実に支払われるか否かが不確定の部分もありますので(定年を迎えるまでに、会社の業績が悪化したり、会社を懲戒解雇され、退職金が支払われない場合などが考えられます)、実務上は、支給される蓋然性が高い場合にのみ財産分与の対象になるとされています。
この点、熟年離婚の場合、定年退職まで間近であることが多く、退職金が支払われる蓋然性が高いものと考えられます。よって、熟年離婚の場合には、退職金についても、財産分与において考慮されることが多いという特徴があります。
年金分割
婚姻期間中に相手方の厚生年金(又は共済年金)の加入期間がある場合、婚姻期間中の保険料納付実績を分割することにより、将来受け取る年金額が上乗せされます。
平成20年4月1日以後に婚姻した場合は、当事者双方の合意がなくとも、離婚をした日の翌日から起算して2年以内に被扶養配偶者が年金事務所等で年金分割請求をすることができます(3号分割)。
しかし、熟年離婚の場合は、平成20年4月1日より前に婚姻していると思われます。
その場合、平成20年4月1日より前の加入期間については、当事者双方の合意がなければ、年金分割の手続を行うことができません。当事者間での合意ができない場合には、裁判手続(調停、審判等)を申立て、按分割合を決定する必要があります。
上記のように、熟年離婚の場合には、財産的な側面について、検討しなければならない部分が多くなります。
特に、専業主婦の期間が長い方については、年齢等の理由から就職が困難な場合も多く、今後の生活保障のためにも、財産をしっかりと確保する必要性があります。
したがって、熟年離婚を考えられている方は、弁護士に相談されることをお勧めします。