財産分与に税金はかかるのか
財産分与というと、分与の対象となる財産の範囲や慰謝料をどのように含めるかといったことが注目されがちですが、財産分与で税金がかかる場合があるというのは盲点です。特に土地・家屋(不動産)の財産分与のときには、かなりの高額になる場合もあるため、よく調べておく必要があります。
●金銭だけの場合には税金はかからない
財産分与にはいろいろなパターンがありますが、いずれのパターンでも、金銭(現金)のやり取りだけですむ場合には税金は発生しません。慰謝料を含めた財産分与の場合や、純粋な慰謝料請求の場合であっても同じです。
ただし、本来相当と考えられる額を大幅に超えるような金額が財産分与の名目で支払われた場合には、贈与税がかけられる場合があります。実質的には財産の贈与であると考えられるからです。これは税務署の判断によるものですが、そうならないように事前に専門家などに相談しておくのが無難でしょう。
●資産を譲渡する側には所得税がかかる
最も重要なのがこの点です。財産分与によって土地・家屋などの資産を譲渡する場合、所得税の一種である譲渡所得税が発生します。
所得税というのはその人の所得に対してかかるものなので、資産を手放した時に発生するのを疑問に思われる方もいるかも知れません。譲渡所得は、典型的には安く買って高く売った場合にその差額を収入として所得税がかけられる仕組みです。財産分与の場合も同じであり、数年前に購入した土地の金額より財産分与のときの土地の時価が高い場合などには、その差額に対して所得税がかかってくるというわけです。
所得税の一部となりますので、年明けの確定申告が必要になるほか、翌年度の住民税の額にも影響してくることになります。
譲渡所得が発生するのは不動産に限られませんが、実質的に最も額が大きいのは不動産でしょうし、昨今地価が上昇しているということから、注意をしておくべき点です。
●取得する側にも税金がかかる
一方、財産分与として不動産を取得した側には、不動産取得税がかかります。これは、地方税の一種であり都道府県に対して収める必要があります。
税率は、居住用の不動産の場合、時価の3%ということですので、都市部の土地のケースなどでは、こちらもかなりの額になることが多いでしょう(本来は4%ですが、平成30年度末までの特例で軽減されています)。
ただし、平成30年度末までに宅地を取得した場合は、土地の価格を時価の2分の1として計算します。これだけでかなり違ってきますね。
また、財産分与が財産分与が夫婦共有財産の清算を目的として行われた場合には、その範囲については新たに財産を取得したわけではないことから、時価の計算から差し引かれます。これは、財産分与の性質からして当然といえます。
その他にも、いろいろな計算上の特例が定められていますので、こちらも専門家に相談しておく必要があるでしょう。
●税金が高すぎる場合にやり直しができるか?
このように、財産分与に伴う税金の計算は少々複雑です。通常、贈与税は財産をもらった人にかかってくるわけですが、そのイメージとはかなり異なるので注意が必要です。
正にそのような勘違いをして、莫大な全財産を別れる妻に分与した人が後で税金の額を知って驚いたというケースで、最高裁まで争われた事件があります。分与する側には課税されないと信じていたという場合に、錯誤(重大な勘違い)を理由として財産分与契約を無効とすることができるという判決が下されました。この場合、改めて財産分与をやり直すことができるようになります。
もっとも、最近では不動産を含む財産分与を行う場合に弁護士などの専門家が関与しないのは稀でしょう。そのような場合には、錯誤を理由とする無効(やり直し)は認められにくいでしょう。