特別定額給付金について
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国は、新型コロナウイルスの感染拡大防止措置に伴い生じた経済の減速状況に鑑み、家計への支援対策として、国民1人あたり現金で一律10万円を給付するという内容の特別定額給付金事業を行っています。
この給付金は、2020年4月27日時点における住民票に基づき、「住民票上の世帯主」が世帯全員分の申請を行い、かつ、世帯全員分の給付金をまとめて受給することになっています。
そのため、様々な事情で配偶者と別居したが住民票を異動させることができないでいる人(さらには、その人と同居している子供)は、「住民票上の世帯主」でない限り、自ら特別定額給付金の申請を行うことができず、国から直接支給を受けることもできません。この場合は、別居した配偶者に対して、受給した特別定額給付金の内、自分と子どもの分を支払うよう求める必要がありますが、夫婦間に感情的な対立が生じている場合などは、依頼しても配偶者が応じてくれないことも多いと思われます。
2 例外的に世帯主でない者が受給する方法
⑴ そこで、配偶者からの暴力を理由に避難しており、当該避難を継続するため住民票を実際に住んでいる場所に異動させることができないといった事情がある場合は、令和2年4月27日時点での住民票の内容に関わらず、実際に居住する場所において自ら特別定額給付金の申請を行い、自ら同給付金を受給することができる制度が設けられています。
⑵ この制度を利用できる要件は、以下のいずれかとされています。
①DV防止法(配偶者からの暴力の防止および被害者の保護等に関する法律)第10 条に基づく保護命令が出されていること。
②婦人相談所による「配偶者からの暴力の被害者の保護に関する証明書」(地方公共団体の判断により、婦人相談所以外の配偶者暴力対応機関が発行した確認書を含む)が発行されていること。
③住民票秘匿措置の対象となっていること。
まず、①の保護命令が認められるには、暴力事例について、それまでに警察に相談した記録があること、並びに、暴力を受けたことに関する証拠がある程度揃っていることが必要です。そのため、①の要件を今からクリアするのは、かなりハードルが高いと言えます。
次に、③の住民票秘匿措置は、住民票や戸籍の附票のある市区町村等に対して「住民基本台帳事務における支援措置申出書」を提出して申し出をすることにより行われます。申出を受け付けた市区町村は、DV等支援措置の必要性について、警察、配偶者暴力相談支援センター、児童相談所等の相談機関等の意見を聴き、又は裁判所の発行する保護命令決定書の写し若しくはストーカー規制法に基づく警告等実施書面等の提出を求めることにより確認します。そのため、①の保護命令ほどハードルが高いとはいえませんが、当該措置が認められるまで時間がかかるという問題があります。
(詳細はhttps://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_gyousei/daityo/dv_shien.htmlをご確認ください)。
②の「婦人相談所」(大阪では大阪府女性相談センター(http://www.pref.osaka.lg.jp/joseisodan/))の証明書は、相談をすることにより発行されますので、①や③に比べれば利用しやすいといえます。
3 例外要件に該当しないけれども受けとるには
現状では、上記の要件に該当しない人が直接特別定額給付金を受け取る制度は存在しません。しかし、DVの場合に限らず、事実上世帯主の協力が得られない人はたくさんいると考えられます。こういった場合、現時点では、市区町村レベルで運用上の対処を求める、ということが考えられます。
同じような問題は別居中の児童手当の受給でも生じているところであり、参考になると考えられます。児童手当の場合、多くの市区町村では、離婚調停中であることの証明があれば、世帯主ではないが子を監護している親に直接支給されることが多いですが、対応は自治体によってまちまちです。
特別定額給付金に関しては、現時点では確実なことは言えませんが、窓口で事情を説明し、例えば、離婚調停中であることがわかる資料、弁護士への相談記録、世帯主から受け取れない事情に関する弁護士の証明書等を提出することで、柔軟な運用をしてもらえるよう弁護士から働きかける、ということも考えられるところです。
コロナウイルスの影響で経済的に苦しい状況を強いられているのは「世帯主」に限りません。特別定額給付金がそれぞれの家庭の実態に応じ、本来受け取るべき人が受け取れるような運用が行われるよう、当事務所としても努力していきたいと考えています。
(本記事は、2020年6月8日現在の情報を基に作成しています)
「文章作成:大阪和音法律事務所 所属弁護士」
大阪和音法律事務所
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