熟年離婚の財産分与
熟年離婚とは
熟年離婚とは、一般的に結婚生活が20年以上経過した50歳以上の夫婦が離婚するケースを指します。
このサイトでは、近年増加傾向にある熟年離婚の財産分与について解説します。
財産分与とは
夫婦が婚姻期間中に協力して築き上げた財産(共有財産)を、離婚時に公平に分ける制度です。
離婚前に別居した場合は、基本的には別居日時点に存在する財産が対象となります。
このように、財産分与の範囲を確定する基準となる時点を「基準時」といいます。
熟年離婚の財産分与の特徴
上記のとおり、婚姻期間中に築き上げた財産が財産分与の対象になるため、婚姻期間が長い熟年離婚の場合には、財産分与の対象となる財産が多くなるという特徴があります。
また、形成した財産の種類も預貯金だけではなく、不動産、保険、有価証券等多岐にわたる場合が多く、法的な観点から整理する必要があります。
以下ではそれぞれの種類の財産について解説するとともに、財産分与の対象とならない財産についても解説します。
不動産
自宅不動産を購入する時にローンを組む方がほとんどですが、財産分与の際には、基本的には不動産の査定額から基準時の残ローンを差し引いたプラス部分を夫婦で分け合うことになります。
熟年離婚の場合、ローンを既に完済しているか、残っていたとしても大部分の支払いを終えているケースが多く、大きな財産価値を持つ場合があります。
保険
貯蓄型の生命保険など、解約返戻金がある保険については基準時の解約返戻金が財産分与の対象となります。
熟年離婚の場合、保険料を支払っている期間が長い傾向にありますので、解約返戻金も高くなる可能性が高いです。
基準時の解約返戻金の金額は、契約者が保険会社に問い合わせることで知ることができます。
なお、貯蓄型保険等の資産を評価するために基準時に解約したと仮定して解約返戻金の金額を算出するのであり、実際に解約する必要はありません。
退職金
退職金も基本的には財産分与の対象となります。
一般的に、退職金は賃金の後払い的性質を有し、退職金は、配偶者からの種々の協力(「協力」には家事労働等も含みます)を得て定年まで勤務を継続できたからこそ獲得できたものと評価することができるため、離婚時にその協力によって形成された相応分を分与すべきだからです。
もっとも、実務上は、支給される蓋然性が高い場合にのみ財産分与の対象になるとされています。定年を迎えるまでに、会社の業績が悪化するなど、不確定要素があるためです。
この点、熟年離婚では定年退職まで間近であったり、既に定年を迎え、退職金を支給されていたりすることが多いため、ほとんどの場合に退職金が財産分与の対象になると考えられます。
まだ定年退職を迎えていない場合
基準時に仮に自己都合退職した場合にもらえる退職金が対象となります。
もっとも、基準時に働いている会社に婚姻前から勤めていた場合、婚姻期間中に積み立てた退職金の金額のみが財産分与の対象となります。
具体的な計算方法は以下のとおりです。
(婚姻期間中に積み立てた退職金)=(基準時に自己都合退職すれば貰えた退職金)―(婚姻時に自己都合退職すれば貰えた退職金)
勤続年数によって退職金の算定率が変わらない場合は、在職期間における婚姻期間の割合で算定する方法もあります。
(婚姻期間中に積み立てた退職金)=(基準時に自己都合退職すれば貰えた退職金)×婚姻期間÷在職期間
既に定年退職を迎えた場合
既に退職金が支給され、預貯金の口座に預け入れたなど、他の財産に形を変えた場合は、退職金として独立に財産分与の対象となるのではなく、基準時の預貯金残高など、形を変えた後の財産が財産分与の対象になります。
基準時に存在する財産が財産分与の対象になるため、退職金を基準時において既に使ってしまっている場合には、使った額は対象になりません。
財産分与の対象にならない財産
夫婦が協力して築いたものではない、夫婦どちらかの固有の財産を「特有財産」といい、財産分与の対象となりません。
熟年離婚の場合、夫婦それぞれが親から相続している場合が多いですが、相続財産は特有財産にあたり、財産分与の対象となりません。
具体的には、次のような財産は、財産分与の対象となりません。
- 親や親族から生前贈与、または遺産相続した財産
- 結婚前の独身時代から所有していた財産
- 別居してから夫婦それぞれが取得した財産
など
もっとも、基準時までに共有財産と混在してしまった場合には、特有財産と主張することが困難となるため、注意が必要です。
まとめ
上記のように、熟年離婚の場合には、財産的な側面について、検討しなければならない部分が多くなります。
特に、専業主婦の期間が長い方については、年齢等の理由から就職が困難な場合も多く、今後の生活保障のためにも、財産をしっかりと確保する必要性があります。
熟年離婚を考えられている方は、早めに弁護士に相談されることをお勧めします。







































