調停離婚での弁護士の役割

先日とある芸能人の離婚判決が出て大きく報道されましたが、結局は判決確定前に取り下げられ、協議離婚として終了したようですね。
今回の件を見てもよく分かるとおり、離婚というものは夫婦の一方がどれほど「離婚したい」と願っても、もう一方が離婚に同意してくれなければ、簡単には離婚することができないものです。離婚についてのご相談が当事務所にも日々寄せられておりますので、あらためて離婚や離婚裁判について少しご紹介してみましょう。

■協議離婚・調停離婚・審判離婚

離婚というものは、夫婦がきちんと合意すれば、所定要件を備えた離婚届の届出によって成立します(協議離婚)。ところが夫婦のいずれかが離婚に同意しなかったり、離婚の際の条件面で折り合わないような場合には、協議離婚することができません。こうした場合、離婚裁判によって裁判所に離婚を認めてもらわなければなりませんが、わが国では調停前置主義が取られているため、離婚裁判をする前にまず調停をしなればなりません。
調停というのは、家庭裁判所の一室で、調停委員や裁判官を交えた話し合いをすることです。調停では、第三者の意見を交えた裁判所での話し合いですから、ある程度冷静な判断が期待できます。調停の中で離婚自体や離婚条件の調整についての合意ができた場合、調停により離婚が成立します。調停離婚が成立しなかった場合でも、審判によることが相当であると判断されるケースでは、調停に代わる審判(審判離婚)がなされる場合もあります。

■離婚原因があるかどうか

調停による離婚が不調(不成立)となり、それでも夫婦の一方が離婚することを望む場合には、今回の芸能報道で見られたような、離婚裁判を起こすことになります。
離婚することができる理由は民法に5つ定められており、この5つのいずれかに該当することを主張立証しなければ、離婚は認められません。法定の離婚事由とは以下のようなものです。
民法770条1項
1号:配偶者の不貞行為
2号:配偶者による悪意の遺棄
3号:配偶者の3年以上の生死不明
4号:配偶者の、回復の見込みのない強度の精神病
5号:その他、婚姻を継続しがたい重大な事由
1号や3号は比較的、該当の有無が判断しやすいですね。ただ、離婚に関するお困りの声を実際にお聞きしていると、離婚したい原因として最も多いのは「性格の不一致」というものであるように思います。これは5号に該当するかどうかという問題です。
今回報道されたケースも、1号~4号ではなく、5号の該当性が正面から争われていました。どの程度の行為が「婚姻を継続しがたい重大な事由」に該当するか、まさにケースバイケースの判断となりますから、事前の見通しが非常に読みづらいものであったと思います。
なお今回報道されたケースでは、第一審で離婚を認める判決が出たため、妻側が控訴して引き続き争う可能性も考えられましたが、結局は夫の側が裁判を取り下げて、協議離婚が成立するというやや予想外の結末になったことはご存知の通りです。おそらく双方、これ以上裁判を続けることのメリットがないと判断し、裁判外での交渉が新たに成立したのでしょう。双方ともにまだ若く子もないですから、このような終わり方は、ある意味きれいに終わった形ともいえます。
当事務所に寄せられる離婚のご相談では、離婚問題から派生して、子の親権や養育費、子との面接調整、年金分割、残された不動産や住宅ローンの問題など、周辺問題へ広く波及しているケースも見られます。
ただでさえ感情的になったり、利害関係が生じている状況下で、双方が冷静に話し合いを進めて一つ一つの問題を解決することは、不可能ではないものの、肉体的にも精神的にもかなりの重労働であることは事実でしょう。
当事務所でも、こうした離婚本体の問題と周辺の問題の解決について年単位で取り組むことがあります。大変、負担や責任の重い業務となりますが、ご本人がお一人でこれらの問題解決に取り組むときのことを思うと、こうした分野こそ、専門家である弁護士の役割が非常に大きな意味を持ってくるものであると思います。
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