ADHDの夫(妻)との離婚は可能?慰謝料請求の可否と有利に進める方法
パートナーがADHDの特性をお持ちの方で、「パートナーのADHDの特性を知って結婚したのだから、自分が我慢しないと」「自分の我慢が足りないだけなのかもしれない」と一人で悩んでいませんか?
ADHDのパートナーとのすれ違いやトラブルで離婚を考えるようになった方は少なくありません。
本記事では、以下の点について詳しく解説します。
- パートナーのADHDを理由に離婚ができるのか
- 離婚を有利に進めるために考えるべきこと
- 離婚の具体的な進め方
1.「ADHDであること」だけを理由とした離婚は難しい
離婚が認められるための「法定離婚事由」とは
「法定離婚事由」は民法に定めがあり、以下の4つに限られます。
これらに該当する場合でないと、法的に離婚を認めてもらうことはできません。
- ①パートナーが不貞行為をしたこと
- ②パートナーから悪意の遺棄をされたこと
- ③パートナーの生死が3年以上明らかでないこと
- ④婚姻を継続し難い重大な事由があること
「ADHDであること」だけではこれらに該当しません。
そのため、ADHDということだけを理由に離婚をすることは難しいのが現状です。
ただし、ADHDのパートナーと離婚ができないという意味ではありません。
以下のようなケースでは離婚をすることが可能です。
2.ADHDが関係する離婚が認められる5つのケース
- 相手が離婚に合意している(協議・調停離婚)
- 不貞行為(不倫)がある
- ADHD特性に起因するDV・モラハラがある
- 生活費を渡さない、家事を全くしない(悪意の遺棄)
- その他(浪費、失業の繰り返しなど)婚姻関係が破綻している
2-1 相手が離婚に合意している(協議・調停離婚)
相手が離婚に合意をしている場合には、協議離婚または調停離婚ができます。
2-2 不貞行為(不倫)がある
相手が不貞行為・不倫をしている場合には、法的に離婚が認められる可能性が高いです。
2-3 生活費を渡さない、家事を全くしない(悪意の遺棄)
相手が理由なく生活費を渡さない、借金を繰り返して家計を逼迫させる場合や、家事を全くしない等の事情がある場合には、法的に離婚が認められる可能性があります。
2-4 ADHD特性に起因するDV・モラハラがある
相手から日常的に暴力を振るわれている場合には、法的に離婚が認められる可能性があります。
2-5 その他(浪費、失業の繰り返しなど)
ADHDに起因する行動(浪費、失業の繰り返し等)がある場合には、婚姻関係が破綻していると判断され、法的に離婚が認められる可能性があります。
3.離婚を有利に進めるために、今すぐ始めるべき3つのステップ
- ステップ1:証拠を集める
- ステップ2:別居する
- ステップ3:離婚の条件を整理する
ステップ1:証拠を集める
事実を証明するには証拠が必要となります。
たとえば、あなたがADHDのパートナーから暴行を受け、怪我をしたとします。
パートナーから暴行を受けたと主張したとしても、パートナーが暴力を振るっていないと主張した場合、証拠がなければ暴行の事実を証明することはできません。
怪我の写真や診断書、暴行時の録音等があれば、たとえパートナーが暴行の事実を否定したとしても、暴行の事実を認めてもらえる可能性が高くなります。
事実であっても、証拠がなければ事実を認めてもらえない可能性があります。
そのため、証拠が重要となります。
ステップ2:別居する
法定離婚事由に直接該当しない場合でも、別居が長期間続くことで、夫婦関係の継続が困難と判断してもらえ、離婚が認められるケースもあります。
離婚を認めてもらううえでも、別居は大きな意味を持ちます。
また、ADHDのパートナーの言動が耐えがたいと考えているときに、無理に同居を続けることで、夫婦関係がさらに悪化するおそれもあります。
物理的に距離をおくことで、冷静に判断ができることもあります。
※ただし、別居を開始してしまえば証拠集めが困難となるため、別居を始める前に、一度弁護士にご相談されることをおすすめします。
ステップ3:離婚の条件を整理する
離婚をするにあたって、決めなければならない条件は大きく分けて以下の6つです。
- 親権
- 養育費
- 面会交流
- 財産分与
- 年金分割
- 慰謝料
これらの条件を取り決めることができれば、離婚をすることができます。
4.お金の問題|ADHDを理由に慰謝料は請求できる?
- 原則:ADHDの特性そのものへの慰謝料請求は困難
- 例外:慰謝料を請求できるケースもある
ADHDの特性そのものへの慰謝料請求をしたとしても、日常的なすれ違い等を理由に慰謝料を請求することは難しいのが実情です。
しかし、ADHDから起因する言動により精神的苦痛を受けた場合には、慰謝料請求ができる可能性があります。
たとえば、不貞やDVが代表例として挙げられます。
不貞やDV以外にも、慰謝料が認められるケースもあります。
慰謝料を請求できるかは事案によって異なるため、弁護士へご相談されることをおすすめします。
財産分与はきっちり請求する
たとえ慰謝料請求ができない場合でも、財産分与の請求はできます。
離婚をすることで、今後の生活や貯金に不安をお持ちの方も多くおられると思います。
不安を払しょくするためにも、財産分与は請求しておきましょう。
5.ADHDのパートナーとの離婚を弁護士に相談する3つのメリット
離婚問題は感情的な対立や複雑な法的手続きを伴うことが多く、ご自身だけで対応されるのは簡単ではありません。
弁護士に依頼することで、次のようなメリットが得られます。
①法的に有利な主張を組み立て、交渉を代行してくれる
弁護士は離婚に関する法律や判例に精通しており、あなたにとって法的に有利な主張を組み立てます。
また、相手方との交渉も弁護士が代行するため、専門的な対応が可能となります。
②相手との直接のやり取りによる精神的負担が大幅に軽減される
ADHDのパートナーは、言うことがその時々で変わり、話をすることで疲弊してしまうケースが少なくありません。
相手との直接のやり取りがなくなるだけでも、精神的負担を大幅に減らすことができます。
③離婚協議から調停、裁判まで一貫したサポートが受けられる
弁護士は協議から調停、裁判に対応できるため、すべての段階で継続的なサポートを受けられます。
まとめ
ADHDの特性をもつパートナーとの結婚生活では、日常のすれ違いやトラブルが重なり、精神的に大きな負担を感じている方も少なくありません。
「努力してきたけれど限界を感じる」「離婚を考えているけれど、罪悪感や不安で踏み出せない」「自分が我慢すればいい」「自分の我慢不足かもしれない」――そんな思いを抱えていませんか。
ADHDの特性は、悪意によるものではなく、本人の努力だけではコントロールが難しい部分もあります。
だからこそ、離婚を進める際には、感情的な対立を避けつつ、冷静に法的な整理を行うことが大切です。
離婚は、人生を大きく左右する重要な決断です。
感情や状況に流されず、法的に適切で納得のいく形を選ぶためにも、まずは弁護士に相談してみてください。
あなたの状況に寄り添い、最善の解決策を一緒に考えます。







































