突然、相手に家を出ていかれてしまった方へ
配偶者に出ていかれたときの対応について、以下の点から 詳しく解説します。
① 相手が自宅を出て、別居を開始したときにとるべき初動
② 相手が弁護士を立ててくる場合の対応
③ 相手が離婚の意思を示してこない場合の対応
④ 今からできる準備方法
①相手が自宅を出て、別居を開始したときにとるべき初動
⑴ 「自宅を出ていく」という行動は、気軽にとれるものではありません。
にもかかわらず、相手が自宅を出たのであれば、相手は、「あなたともう一緒には暮らせない」「離婚したい」「一定期間距離を置きたい」等考えており、いずれにしても「あなたとの同居生活がしんどくなって限界を迎えた」ことになります。
⑵ しかし、「相手が自宅を出ていく」ことが予想外だった場合、一般的に、出て行かれた側はかなり動揺してしまい、感情的に行動してしまうものです。
このような場合、「とにかく相手に自宅へ戻ってきてほしい」という気持ちのあまり、「相手の気持ちを理解せずメッセージや電話をかけ続けてしまう」又は「腹を立てて、怒りのメールを送ってしまう」といった対応をしてしまいがちです。
しかし、絶対にこのような感情的な対応をしてはいけません。
なぜなら、無駄な努力で時間を浪費し、神経をすり減らしてしまいますし、感情的に対応すると、建設的な話し合いができなくなるからです。
例えば、同じ別居でも、「固く離婚を決意して準備を整えた上での別居」と「頭を冷やすために距離を置きたいという理由で行われた別居」とでは、相手の離婚に向けた決意の固さが全然違います。
相手の心情を理解せず、離婚の意思が固い相手に「自宅に戻ってきてほしい」と泣きついても、相手が自宅に戻ってくる可能性はかなり低く、あなたの希望が通らないのに神経だけすり減ってしまうことになります。
また、あなたが相手との関係修復を希望する場合は、感情的に相手を攻撃すると、修復に向けた前向きな話し合いが困難となり、かえって自分が望まない結果につながってしまいます。
逆に、あなたも相手と離婚したいと考え、離婚協議を行う場合でも、感情的になっていては冷静に話し合えませんよね。
このように関係修復を希望するか否かに関わらわず、感情的に行動をすると、建設的な話合いができなくなってしまいます。
特に、「相手に子どもを連れて出ていかれた」という場合は、あなたが感情的な行動をとって相手との感情的対立が大きくなると、「子どもともなかなか会わせてもらえない」ということにもなりかねません。
では、どうすればよいか。
具体的には、まずは相手の別居の理由と目的を理解することが大切です。
その際には、「まずは反論せずに聞くこと」を徹底しましょう。
相手の言い分には承服できないこともたくさんあるでしょうし、自分の事実認識と異なることも多いと思います。
しかし、そこで反論してしまっては感情的な対立が出てきてしまい、冷静に話し合うことはできません。
ここは、今後の戦略を立てるためにも、とにかく冷静に「相手がこだわっているポイントを真摯に理解する」ために「まずは反論せずに聞くこと」から始めましょう。
その結果、関係修復の方向で話し合える場合はよいですが、「相手が関係修復を考えていないと思われる場合にどう対処するか」が問題です。この点については、相手が離婚の希望を明確にし、弁護士を立ててくる場合と、相手が関係修復を考えている訳ではないが、他方で離婚の意思も示してこない場合に分けて、それぞれ解説します。
②相手が弁護士を立ててくる場合の対応
⑴ 「相手が自宅を出た後、弁護士から手紙が届き、離婚を求めてきた」というケースでは、相手方はすでに離婚を決意し、準備を進めたうえで別居した可能性が高いと言えます。
そして、相手には「少なくとも同居に戻る意思は全くない」と考えてよいでしょう。
そうすると、あなたが相手との関係修復を希望しても、多くの場合は徒労に終わり、時間だけが経ってしまいます。
そうであれば、いたずらに関係修復に向けた話をしようと頑張るよりも、意識を切り替えて、「離婚することを想定して、その場合の離婚条件の着地点」を考えたほうが賢明です。
その際には、自分が交渉上、強い立場なのか見極めることが大切です。
例えば、相手が離婚を急いでいる場合・法律上の離婚原因がない場合は、あなたが同意しない限り離婚にはならないため、強気に交渉できる可能性があります。
逆に、あなたの方が相手よりも収入が多く、子どもも相手の元で生活している場合は、別居が続くと高額な婚姻費用が発生する場合もあります。
こういう場合は、離婚までの期間が長引くだけであなたが経済的に不利となります。そうすると、明確な離婚原因がないとしても早めに離婚に応じておいた方が経済的には得だということになります。
⑵ また、「相手が子どもを連れて別居を開始した」という場合、別居期間が経過すればするほど親権争いにおいてあなたが不利になってしまうことが多いので、時間との勝負です。
あなたが子どもの親権を取得したいのであれば、まずは「監護者指定・子の引渡し」という手続きを速やかに行い、子どもを取り戻さなければなりません。
この手続きも、別居期間が経過すればするほど、あなたが不利になってしまうので、早めの決断と対応を冷静に行う必要があります。
⑶ 弁護士から通知が届いている場合は、すぐに離婚問題に詳しい弁護士に相談して、次の手を打つようにしてください。
③相手が離婚の意思を示してこない場合の対応
「妻が子どもを連れて別居した後、夫に対して婚姻費用だけ請求して、離婚には触れてこない」というケースや「夫が一人で出て行ったけど、そのまま妻は何も言ってこない」というケースがありますが、これらの場合、相手は離婚を考えていないのではなく、「むしろ離婚したいけれども、交渉上有利な立場を作るためにあえて離婚を切り出していない」可能性があります。
このような場合、相手が表面上離婚の意思を示してこないからといって、相手に離婚の意思がないとは限りません。
そのため、相手が離婚の意思を示してこないとしても、あなたから離婚を前提に協議を進めると、相手も応じてくる可能性があります。
ただ、「自分から離婚を言いだしたら、相手の思うつぼじゃないの?」とも思いますよね。
しかし、離婚協議を進めずに別居だけを継続した場合、その間に支払う婚姻費用がかさみ、あなたが経済的には不利になるという状況も十分あり得るのです。
逆に、「夫が一人で出て行ったけど、離婚の意思は示してこない」というケースの場合、「あなたから離婚は言い出さず、婚姻費用だけ支払ってもらう方が経済的に有利に進められる」という判断もあり得ます。長期化しても構わないなら、そういう戦略も十分あるでしょう。
「別居が長期化することや離婚を切り出すことによって経済的に不利になるのはどちらか」という点を読み切って方針を決める必要がありますので、相手から離婚の意思を示されないとしても、やはり早めに弁護士にご相談ください。
④今からできること
相手が別居に踏み切るというところまでいった場合、相手は周到に準備を整えたうえで別居を開始している可能性が高いです。
また、あなたの財産資料などがすでに把握されている可能性も高いでしょう。
そうすると、「相手は離婚を進めるにあたって資料をそろえているけど、あなたは相手の財産が全く分からない」という状況で交渉がスタートし、どんどん相手のペースで離婚協議が進んでいってしまうことにもなりかねません。
そのため、「相手に別居の兆候がある」と感じた段階で、あなたも離婚に向けて準備をしておく必要があります。
具体的には、
1.離婚協議に備えて早めに相手の財産資料・収入資料を把握しておく
2.不貞や暴言・暴力など、離婚原因として相手の不利になるような事実があれば、証
拠を押さえておく
3.相手がどこに引っ越そうと考えているのか、子どもを連れて別居を開始しようとしているのかを探ることが必要です。
賃貸物件の資料やホームページの閲覧履歴が残っていれば、引っ越しを考えている可能性がありますので、そのような点に気を配ってみるのも良いでしょう。
早めに弁護士にご相談いただければ、個別具体的な事案に応じてアドバイスができますし、より多くの選択肢から手を打つことが可能です。
「相手に別居の兆候がある」と思ったら、早めにご相談されることをお勧めします。