モラハラを受ける人の特徴
「モラハラを受ける人の特徴」「モラハラの被害者の心理状態」の説明をします(モラハラの特徴やモラハラをする人の心理については、別のコラムで解説していますので、そちらをご確認ください)。
「モラハラを受ける人の特徴」や「モラハラの被害者の心理状態」を知り、自分もそれらに当てはまると感じた場合、それがきっかけで自分がモラハラ被害に遭っていることに気づくことができるかもしれません。
そして、自分がモラハラ被害に遭っていることを認識することができれば、「モラハラをしてくる相手にどういう考え方で向き合えばよいか」について答えを得ることも可能になります。
以下において、①モラハラを受ける人の特徴、②モラハラを受ける人の心理状態、③モラハラに対処するための考え方を説明し、モラハラをしてくる相手にどういう考え方で向き合えばいいのかお伝えしたいと思います。
1 モラハラを受ける人の特徴
モラハラ加害者が配偶者に対してモラハラを行う動機は、心の中に抱えている自尊心の低さや劣等感・不安感を払拭したいという点にあります。モラハラ加害者は、(半ば無意識に)自分が優れていることを実感しようとして、身近に存在して自らの言動を受け入れてくれる(と感じている)配偶者を攻撃するのです。
そのため、モラハラ加害者は、自身の言動を受け入れてくれる人をモラハラのターゲットに定める傾向があります。逆に言えば、下記のような性格や考え方の方がモラハラのターゲットになりやすいといえます。
① 自己主張が苦手で強く言い返せない
② 素直で欲がない
③ 自分の意見を通すより相手に合せようとする
④ 場の雰囲気を読み、他人への配慮ができる
⑤ 謙虚/自己評価が低い
⑥ トラブルがあると、まず自分に悪いところがないか反省する
⑦ 責任感が強く、真面目で几帳面
⑧ 他人のために自分を犠牲にすることをいとわない
他方で、上記と逆の性格・考え方の人、具体的には以下のような人はモラハラの被害に遭いにくいと言えます。
① 自己主張が強く、「やられたらやり返す」という人
② 他人に配慮するよりも自分の希望を優先する
③ 自分に自信があり、問題があると人のせいにする
④ 欲求が多く、素直でない、大雑把な性格
また、もともとはモラハラのターゲットになりやすい性格・考え方ではなかったのに、結婚後の生活の中で性格や考え方が変わってしまい、モラハラの被害者となるに至ったという方も大勢いらっしゃいます。
特に、「専業主婦として家庭に入り配偶者を支えるようになった」という方は、社会との関わりが減って自信を失った、あるいは、経済的に配偶者に依存する状況となった という理由で配偶者に強く言い返せないことがあります。そのため、結婚前はモラハラの被害にあうようなことはなかったものの、結婚した後にモラハラの被害にあうようになったということもあります。
自分がモラハラのターゲットになりやすい性格や考え方でないか、確認してみて下さい。
2 モラハラを受けている人の心理状態
次に、モラハラを受けている人の心理状態についてです。
これを知っておくことも、あなたが「モラハラに遭っていること」に気づくために有益ですので、今のあなたが該当する点がないか、確認してみてください。
モラハラのターゲットになりやすい性格や考え方を持つ人は、実際に配偶者から無視をされたり、人格否定の言葉を投げかけられた場合、まず「自分のどこが悪かったのだろう?」と考えてしまいます。そして、自分のよくないところを改善しようと努力したり、思い悩んだりします。
しかし、モラハラ加害者がそのような言動を行う目的は、自分が優れていることを実感しようとして、身近に存在して自らの言動を受け入れてくれる(と感じている)配偶者を攻撃し、それによって心の中に抱えている自尊心の低さや劣等感・不安感を払拭するという点にあるので、被害者側がいくら自分の改善を試み、思い悩んでも、解決することはありません。
むしろ、被害者が努力すればするほど、加害者にとっては、被害者が「自分の言動を受け入れた」と受け止めることにつながり、その後も同様の言動が執拗に繰り返されることにつながっていきます。
このように見ていくと、「モラハラを受けたらすぐに逃げればいい」と思うかもしれません。
しかし、モラハラ被害者は、「加害者から逃げる」という心理状態にはなかなかなれません。
これは、なぜなのでしょうか。
まず、逃げ出せない原因の一つは、被害者自身が攻撃を正当化してしまうという点です。
モラハラ加害者は自分の配偶者であり、自分が人生を共に歩もうと誓った相手です。そのため、簡単に関係を解消するという気持ちになれないのです。むしろ、配偶者から「お前のためを思って言っている」という風に言われると、素直な人ほどそれをまともに受け止め、どんなに苦しい思いをしていても、「自分が悪いから言われるんだ」「自分のことを愛しているからこそ言ってくれているんだ」「これが普通」と考えて納得しようとします。
つまり、被害者自身が、加害者からの攻撃を正当化してしまうのです。
逃げ出せない原因の2つ目、それは、モラハラ被害者も、加害者に心理的に依存している、共依存関係になってしまっていることです。
被害者の中には、単に攻撃を自分の中で正当化するだけでなく、
「自分だけが配偶者の心の理解者だ」
「不安定な配偶者を受けとめられるのは自分だけだ。あの人は私がいないとダメだ」
と思い込み、そこに自らの存在価値を見出してしまう人さえいます。
このように、加害者を受け止める自分に存在価値を見出す結果、自らそういう立場にとどまることを選んでしまい、理不尽な理由で怒り出す加害者からの攻撃を受け止め続けてしまうわけです。
このような共依存関係に陥ると、抜け出すことができません(「抜け出そうと思わない」という方が正しいかもしれません)。
被害者は、ある意味自分の意思で加害者を欲する状態となるため、被害に遭っていることに気づかないことになります。
では、被害者が悪いのでしょうか。それは違います。
これは、あくまで「加害者の心理操作によって共依存の関係に引き込まれているのであって、もともとの自分の意思ではない」という点をきちんと認識してください。
モラハラ被害者がどのような心理状態に陥るのかを理解すれば、モラハラの被害から抜け出すきっかけになるはずです。
3 モラハラに対処するための考え方
モラハラ加害者は、心の中に抱えている自尊心の低さや劣等感・不安感を払拭することを何よりも優先して考えます(考えてしまう)ので、被害者からの働きかけでその言動を変えることは極めて困難です。
モラハラの解決策は、最終的には逃げることです。つまり、別居や離婚をすることです(その方法については、「モラハラ夫と離婚するための4つのポイント」というコラムで確認してください)。
しかし、ようやく別居に踏み切った段階では、回復できないほど心を壊されてしまっている、というケースもあります。
当事務所の依頼者の方にも、そのような方が多数いらっしゃいました。
「ここまで傷つく前に、防ぐ手はなかったのか」と憤りを感じることもありました。
弁護士に相談するのは最終段階という方が多いですし、何よりも被害者自身が被害に気付かない以上、どうしても防ぎようがないという側面もあります。ただ、弁護士に相談する前の段階でもできることはあります。
まずは、「自分が悪い」という前提を変えてみること、そして、自分と相手を客観的な視点でみる癖をつけることです。
モラハラを受ける人の心理として、加害者から攻撃を受けたときに「自分のどこが悪かったのか」を考えてしまい、そこから被害が始まっていくと説明しました。
しかし、モラハラ加害者は、あくまで自らの自尊心の低さや劣等感・不安感を払拭するために被害者を攻撃しています。決して、被害者に問題があるわけではなく、また被害者の問題を改善することを目的としているわけでもありません。そのため、被害者が「自分のどこが悪かったのか」を考えても、モラハラの解決にはつながらないのです。むしろ、「ありのままの自分を受け入れ、自分はこれでいいんだ」という考え方を軸に据えてください。そうすることで、モラハラ加害者の言動に振り回されることを防ぐことができます。
また、加害者から攻撃を受けたときには、「また怒らせてしまった、どうしよう」「どうすれば静まってくれるのだろう」とうろたえる前に、一呼吸おいて、自分と相手を客観的な視点から見てみましょう。
そして、「攻撃をしてくるのは、自分に問題があるからじゃなくて、攻撃をしてくる相手に精神的なもろさがあるからじゃないか」と冷静に加害者の言動を疑ってみる習慣をつけてください。そうすれば、相手の怒りに飲み込まれず、相手の真の目的が見えやすくなります。
自分自身をそのままで十分価値のある存在だと認めることが、モラハラ被害から抜け出す第一歩となるということを覚えておいてください。
4 まとめ
モラハラというのは、育ってきた環境にも起因する本当に根深い問題です。
そして、現在、家庭内で行われているモラハラは、お子さんにも影響を与え、将来にわたってモラハラの連鎖を生み出してしまうおそれもあります。そのようなことは、絶対にどこかで断ち切らないといけません。
このコラムを参考にして、一人でも多くの方が、「自分はモラハラの被害に遭っているのではないか」と気づくことができ、モラハラ被害を解決できれば幸いです。
(執筆者:弁護士田保雄三)